札幌高等裁判所 昭和26年(う)272号 判決
昭和二十五年十一月十六日附起訴状の記載、原判決第一事実の記載並びに原判決援用の証拠を綜合して考えると、検察官は被告人が小高金太郎から同人が小川登方から窃取した衣類等(但し小高が佐藤に売却した布団及び丹前各一を除く)を故買した一個の事実を起訴したものであり、原裁判所はこの起訴事実に基いて、証拠により原判示第一の一個の事実を認定したことが窺われる。尤も弁護人摘示の小高金太郎の原審公判廷における供述によると、小高金太郎が小川登方から窃取した衣類等(佐藤に売却した布団、及び丹前各一を除く)は十月十七日と翌十八日の二回にわたり被告人方に運搬して引渡し代金もその都度支払われたことを認め得るけれども、原判決が証拠に援用した司法巡査作成の小高金太郎の供述調書の記載を仔細に検討すると、小高金太郎が十月十七日と翌十八日の二回にわたり被告人に引渡した衣類等は凡て小高金太郎が十月十七日小川登方から窃取したもので小高金太郎は右物件を窃取する際既にこれ等を被告人に売却しようと決意しており、そして小高は十月十七日この趣旨で被告人と話し合い当日兎も角小川方から窃取した物件全部について、売買の話が纏まりただ被告人の都合により物件の引渡がその日と翌十八日の二回にわたり行われ、代金の支払もその都度なされたことを認め得るのである。
そうすると被告人と小高金太郎間の右売買行為は二個でなく、包括的に一個の売買行為があつたと認めるのが相当である。然らば右と同旨に出てた原判決には審判の請求を受けない事件について判決し又は証拠によらないで事実を認定した違法はないから論旨は理由がない。